事件簿その1

 あるとき職場に、珍しくお化粧バッチリの華のある女性が入社してきた。経験も5年以上とのこと、皆から期待されての入社。けれど、日に日に同じプロジェクトに就いたメンバーの顔が曇ってきた

 プリンターに何百枚という資料印刷のキューを出したまま、自分はタバコを吸いに席を外し、印刷待ちをしていた他の社員が、紙切れのサインが出て停止しているプリンタに激怒しながら紙を入れる。するとまた、何百枚かの印刷の続きが始まった。

 なんていう、話を聞いてはいたが、5年以上もキャリアがありながら、仕事ができないということはあるまいと思っていた。度重なるメンバーからの苦情で、遂にそのプロジェクトを外され、私のプロジェクトに移ってくることが決まった。数少ない女性社員ということで、お昼も共にしていたし、休憩時に話す会話は普通だったので、皆なんでひどいこと言うんだろう、なんて思いながら一緒に仕事を始めた。

と こ ろ が。だった。

 5年のキャリアは運用だったということが判明、SEはおろかPG業務も初めて。つまり、言語は使えない。まぁ、そこはじっくり教えて行きまっせ、となったわけだが。そもそもの社会人としての通念に欠ける人だったのだ。

 まず、遅刻の多さ。遅延届けの量が半端ではなかった。私も同じ路線を使っていたのだが、そんなに持ってこれないよ、ってぐらい。1分でも遅れれば、鉄道会社も遅延届けを発行しないわけには行かないらしいので、仕方なかろうが、朝のラッシュ時に3分位の遅れは日常茶飯事、事故ではない。ましてや、遅刻の言い訳にはならない。

 さらに、新しいIEを勝手にダウンロードし始めて「5時間経ってもまだ終わらないの〜」と言う。部に、CDがあるのに、なぜダウンロード?5時間も何故放置しておく??挙句の果てに、その日予定されていた飲み会(チームのではなく30人規模の課の飲み会)をドタキャン「私行きませんけど?」みたいな。

 その上「あとでPC落としておいてくれないかな。」と私に頼む始末。今日これから飲み会行くっていうのに、会社に戻れということ??とハテナで頭が一杯に。ハハーン、みんながカチンと来るわけだ〜と妙に納得しながら、ダウンロードをバシーンと強制終了して「CDあるから、明日やりな。」とその場でシャットダウンしてあげた。
それで終わりじゃなかったのだ。

 言語の方も覚えてもらいたかったし、開発環境を整えるために、数種類のソフトウェアを机に積み上げ、一緒に一つずつインストールして行き、1日かかってほぼ設定を終えた。あと一種類残ってるけど、もう定時も過ぎてるし、これは月曜日にしましょうね、と解散。

事件はその後起きた。

 月曜日、出社してみたら、彼女のPCがなんとフォーマットされている。涼しい顔で「リカバリしました。」って言ってる。夢かと思った。一日かけて、設定したソフト達は綺麗さっぱり消えている。「え?え?え?え?ええええええ?なぜ?」って聞くと「?」って顔で返される。

 後でこっそりと話してくれたのが「土曜日にね、分からないところを教えてもらおうと、彼氏にお願いしたの。」

 ????彼氏、会社に入れちゃったの??情報漏洩等がなかったので、大問題には至らなかったのだが、常識外もいいところだ。部外者を自分だけの判断で会社に入れちゃうなんて・・・。おまけに、「K部長にあっちゃって『キミ誰?』って聞かれたんだけど、社員ですって言ったら『あ、そう』って行っちゃったの。あぶなかった〜。」って。

 この件は内密に決定打になり、居心地の悪くなった彼女は自己退職していきました・・・。